はじめに
リアルとオンライン合わせて約350名が参加!
今年のCRYPTRECシンポジウム2024は、8月末から列島に猛威をふるった台風10号の影響により開催が懸念されましたが、当日は晴れとなり、大きな交通機関の乱れもなく無事に開催となりました。リアル会場となるTKP赤坂カンファレンスセンターには100名近い参加者が集まり、オンラインでは250名近くの方が視聴され、合計の参加者は350名近くにまで上りました。
本シンポジウムでは、CRYPTRECの2023年度の活動状況の報告のほか、「軽量暗号と標準化動向」、「軽量暗号に対するサイドチャネル攻撃」、「暗号資産の鍵管理」というタイトルで3件の招待講演が実施されました。
CRYPTREC活動報告
検討会、委員会、WGによる2023年度の活動報告
暗号技術検討会については、松本勉座長(産業技術総合研究所)から活動報告が行われました。「CRYPTREC」の概要、CRYPTREC暗号リスト、ガイドラインの策定などの概要を報告されました。
暗号技術評価委員会については高木剛委員長(東京大学)より、耐量子計算機暗号ワーキンググループについては國廣昇主査(筑波大学)から活動報告が行われました。特に、2023年度に策定された軽量暗号ガイドラインと、WGを設置した耐量子計算機暗号についての報告が行われました。
暗号技術活用委員会については、松本勉委員長(産業技術総合研究所)より、暗号鍵管理ガイダンスワーキンググループについては上原哲太郎主査(立命館大学)から活動報告が行われました。特に、TLS暗号設定ガイドラインの改訂と、WGを設置した暗号鍵ガイダンスについての報告が行われました。
招待講演
暗号の専門家3名による、暗号技術の最先端動向の紹介!
招待講演1つ目は、「軽量暗号と標準化動向」というテーマで、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ 常務取締役 CTO of developmentの菅野哲氏がご講演されました。「なぜ、新たな共通鍵暗号を必要としたのか」という入り口からスタートし、NISTの軽量暗号コンペティションに注目して軽量暗号ASCONについてご説明されました。また、標準化動向としてはNISTやIEEEの話題に関してポイントをお話しされました。
招待講演2つ目は、「軽量暗号に対するサイドチャネル攻撃」というテーマで、東北大学の本間尚文教授がご講演されました。サイドチャネル攻撃の種類や事例の紹介から、機械学習を用いた攻撃の脅威が顕著化していること等を紹介。さらにサイドチャネル攻撃耐性は軽量暗号でも重要であること、対策コストの観点では軽量暗号に優位性があること等をお話しされました。
招待講演3つ目は、「暗号資産の鍵管理」というテーマで、インターネットイニシアティブのシニアエンジニア 須賀祐治氏がご講演されました。30分の講演枠でしたが、冒頭で「8時間欲しいです」と話しながらスタートした須賀氏。暗号資産の流出事例の解説や、個人の暗号資産を管理するウォレットに対する攻撃について等、暗号資産に関するセキュリティについて熱くお話しされました。
最後に
今年のシンポジウムは昨年に引き続きハイブリッド形式で開催しました。台風の影響も懸念されましたが多くの方にリアル会場まで足を運んでいただき、本シンポジウム開催の意義を改めて感じました。アンケートにはCRYPTRECに対する多くの関心と期待が寄せられました。その期待に応えるべく、NICTは今後も国内外の有識者と連携し情報展開を積極的に進めて参ります。
(写真は、司会を務め質問に回答するセキュリティ基盤研究室 室長 篠原)